−培養軟骨による治療の流れ− (例:隆鼻術の場合)


1) まず受診していただき、培養軟骨による治療が適応するかどうかを診断させていただきます。
もちろん説明も十分にさせていただきます。この時点で治療を希望される場合は採血し、術前検査
として感染症(ウイルス肝炎・梅毒血精反応・HIV etc)・一般検血・凝固系検査を行います。
結果が出るまで数日かかります。感染症検査で陽性の反応が出た場合は他の方の培養細胞への
感染の危険性を考慮し、残念ながらこの治療はお断りしております。やむを得ないものと考えています。

2) 次に日をあらためて軟骨採取を日帰りで局所麻酔下で行います。軟骨の採取は、耳のうしろの目立ち
にくい場所を選んで行っています。軟骨採取部の傷の処置はご自身で行っていただいています。
縫合を行いますので約1週間後に抜糸が必要です。
軟骨採取と同じ日に培養を行うために必要な血液を採取します。

3) 軟骨を採取してから次の移植手術が可能な状態まで最短で約2ヶ月の培養の期間が必要です。
培養に時間がかかるケースもありますし、せっかくいただいた軟骨から移植に適した細胞が育たず、
もう一度軟骨を採取するケースもあります。(これまで1人ありました)

 ヒトの組織を培養するということは、図面を引いてモノや建物を作ることとはかなり異なります。
計画・予定通りにいかないこともあります。まずこのことをご理解下さい。植物に水や栄養を与え、
お日様にあたるように大切にして気遣いながら素敵な草花を育てていくような過程をイメージして
下さい。


4) 細胞の状態や患者さんご自身のご予定を調整しながら手術日を決定します。できるだけ患者さんの
希望に沿うように手術日を決めたいのですが、なによりも優先しなければならないのは培養細胞の
状態です。不十分の状態で手術を無理に行ってもよい治療結果は得られません。

5) 手術当日

隆鼻術の場合は静脈麻酔と局所麻酔の組み合わせで痛みをとり、眠った状態で行います。
シリコンインプラントが入っている方は、シリコンインプラントを抜去したのち、培養軟骨を注入するための
適切なスペースを作ります。シリコンインプラントが入っていない方は、あらたに培養軟骨を注入する
スペースを作ります。その後に培養軟骨を注入します。手術創は鼻の穴の中にありますので外から
は見えません。細い糸でたくさん縫合しています。特殊な材料を用いた固定一テーピングを行い、縫合し
プロテクターを装着します。手術後は北九州近郊の方は日帰りで自宅へもどられますが、当院は
全国より患者さんがいらっしゃることが多いので小倉北区内のウイークリーマンションを御紹介しています。
(1泊¥4500 程度〜、評判は良いようです)

プロテクターは術後3日目まで、特殊材料とテーピングの固定は術後1週間目までは1日中行います。
術後1週を過ぎてから、術後1ヶ月までは夜間のみ固定を行っていただきます。術後1週間の頃には
かなり固まってきているからです。

※注意してください!

培養軟骨の治療をさまたげるものとして、感染をおこすこと(細菌感染により培養軟骨が溶けてしまいます)
外傷などで鼻を打撲すること、医師の指示に従わず、外固定を自らはずされたり、気づかいうちに外固定
がずれるなどが挙げられ、望ましい形状にモデリングできない場合があります。飲酒、スポーツなど
は当分は禁止です、できるだけ治療のさまたげになるようなことがおこらないよう私たちも配慮して
おりますが、移植後の療養期闘は安静にされ無理のない生活をおくっていただくことについても、
患者さんがたご自身の自覚と努カが必要です。


6) 鼻の穴の中の傷の抜糸は術後7日目を目安に行います。この傷は細い糸でたくさん縫合してあり
ますので、この手術に関与した医師でないと抜糸が困難なので当院で行っています。

以上のスケジュールからすると培養軟骨による治療を行う場合、遠方からこられる場合は手術日を
含め8日間の小倉の滞在となります。(経過良好の場合は途中数日間よそへ行かれたり、一時的に
帰宅されたり、離れることも可能です。) 仕事や学業への復帰の際はまわりの方には『鼻をぶつけた』
『鼻を骨折した』などの説明をされているようです。


治療結果

シリコンインプラントを入れている方のインプラント抜去・培養軟骨注入による治療結果は、この
ホームページ上の症例集を見ていただければある程度イメージできると思います。
また、実際に来院していただき、診察させていただいた上で、院内に保存しているこれまでの
症例集に基づいてご説明いたします。

  質間を受けることが多い内容についてあらかじめ回答しておきます

Q:手術後の腫れはどの程度ですか?

A:過去にシリコンインプラントを入れたときのことを思い出して下さい。おそらくそのときは皮下出血も腫れ
もびっくりするくらい強かったのではないでしょうか? その時とくらべるとこの手術の場合、確実に術後の
腫れは軽いとみなさん言われます。でも手術ですから、ある程度は必ず腫れます。術後2〜3日目が
ピークです。(目から鼻根部のまわりが浮腫状になるのが特徴です。皮下出血はあまり目立ちません。)
その後少しずつ術後7日目にかけてゆっくりひいてゆきます。その後はわずかな腫れが1ヶ月くらいまで
ありますが、それほど目立ちません。仕事への復帰は術後1週をすぎてからが良いと思います。

Q:鼻先を何ミリ、鼻根部を何ミリあげてこういう鼻にできますか?
  自分の希望のデザイン通りの鼻にできますか?

A:これははっきりいって無理です。ご本人のもって生まれた、鼻の形、過去に入れられたシリコンイン
プラントの周囲につくられたカプセルの形状はこの治療の結果に大きな影響をおよぼす要因です。
でも、今入っているシリコンインプラントで何かとても困っていらっしゃる、とにかく気になってしょうがない
という方に関しては、おそらく選択肢としてたいへんすぐれた方法だと思います。なぜならば、従来の
方法では、そのまま抜去してぺったんこの鼻にもどすか、または、再度シリコンインプラントを細工して
入れ直すことが治療の主流だからです。また、シリコンインプラントが露出し、炎症や感染をともなった
場合には、抜去以外に方法がありませんでした。

Q:吸収されて無くなってしまうことはないですか?

A:培養軟骨も若干は吸収されるのですが、従来法の耳介軟骨移植術にくらべると吸収される率はかなり
少ないです。何よりもご自身の細胞を凍結保存できますので、将来的に再度追加移植も可能です。
もう少し高くしたいという御本人の希望にしたがい追加移植を行った方はこれまで2名いらっしゃいます。
反対に軟骨の少し隆起した部分を削った方が1名いらっしゃいます。追加したり、削ったり、現時点での
この治療法の調節性はこの程度です。


Q:時間がたって曲がってくることはないのでしょうか?

A:従来法の肋軟骨移植や腸骨移植などは本来が曲面をもっているものを造形してできるだけまっすぐな
形として移植していました。時間が経過して曲がってくる例は確かに存在しました。しかしながら、培養
軟骨による再建・隆鼻術では現在までの経過観察では曲がった例はありません。

Q:培養軟骨はどのくらいの期間で固まってくるのですか?

A:症例集を見ていただくとわかるように、培養軟骨は移植前はゼリー状です。早い方は1週間程度で
かなりの固さまでかたまった例もありましたが、触ってかなりしっかりしてきたと感じるまでには、通常
3〜4週間程度を要するようです。

私たちが東洋人である以上、持って生まれた骨格・鼻の形はどうにも変えられない部分があります。
培養軟骨はそういう根元的な問題は克服できていません。しかし再建の材料として極めて優れている。
現時点ではそのような認識です。やはり過大な期待は禁物です。治療には確実に限界があります。

治療費

当院は保険外自由診療の場合、カウンセリング料(初診料・再診料)はいただいておりません。
培養軟骨による治療は健康保険適応外です。

通常のシリコンインプラントによる隆鼻術や従来法の耳介軟骨、肋軟骨移植による方法よりも高額に
なります。


必要な術式、必要とされる培養軟骨細胞の量により患者さんそれぞれ治療費はことなります。
最終的には診察をさせていただいたうえで決定します。

決して安い治療費ではありません。治療には時間も必要です。遠方からわざわざ来ていただく
必要もあります。治療には限界もあります。よくかんがえられて決断されてください。でも、この
治療は私にしかできないものなのです。



 当院での矢永博子の培養軟骨による治療は 合計 84 例です。 (08/08/04 現在)