- 胸(豊胸、乳房下垂、乳頭・乳輪、陥没乳頭) –
私(矢永博子)はライフワークとして1984年より乳房、乳頭乳輪に関する手術に取り組んできました。長年の実績と経験にもとづき、みなさんそれぞれの悩みに対して結果を出してきました。どうぞなんでもご相談下さい。


1 豊胸(乳房増大術)

 もともと小さい胸を大きくしたい。出産、授乳後、ダイエット、あるいは年齢とともにバストの張りがなくなってきたなどの悩みに対しては豊胸手術(乳房増大術:胸を大きくする)があります。豊胸は術前計画を立てることが大切です。

 ① それぞれの患者さんの評価:年齢、既婚(経産婦)か未婚か、乳房の大きさなど

 ② 乳房計測を行う

 ③ 外科的アプローチの部位(どこを切開するか)を検討する

 ④ インプラントの位置、すなわちどの層に挿入するか?

 ⑤ インプラントの選択を行う。                

 以上5つのポイントに留意することが大切です。


1)インプラント(人工乳房)を用いた豊胸

 世界的に現在の豊胸の主流です。あくまでも人工物なのでご自身の本来の乳房の大きさ、型、体型、体格、年齢などとのバランスを考えて人工乳房を選ぶことが大切です。私はテクスチャードタイプのラウンドタイプを主に用いています。

 その他にもソフトコヒーシブシリコンやスムースタイプもありますので診察の際にインプラントを手にとってみて選択してください。インプラントのサイズは各種の大きさのものを実際に胸にあてていただいて、ご自身が気に入った種類、サイズを選択できます。下記に手術の方法の比較をしています。また、詳しくはその下に質問形式で説明しているのでごらんください。


切開線の入る場所(どこをきるか?)の比較検討
   
  腋窩切開(わきの下) 乳房下縁 乳輪縁
痛 み 痛みが強い、1週間程度続く 仕事は4〜5日休む必要がある 軽 度
 2〜3日目から事務仕事等は可能
軽 度
 2〜3日目から事務仕事等は可能
傷 痕 わきは目立たない 傷が乳房の下縁に隠れてほとんど目立たない。 傷あとは白くなるので色の黒い人は目立つことがある 乳輪のまわりが白い傷痕になり目立つ

*痛みと傷とは個人差があります


手術法の比較検討(インプラントを挿入する位置)
   
  大胸筋下 乳腺下 大胸筋筋膜下
痛 み 痛みがある 軽 度 軽 度
寝たときのインプラントの形 分かりにくい 境界が分りやすい
 (特に胸の上の方の
   組織が薄い場合)
境界が分りやすい
 (特に胸の上の方の
   組織が薄い場合)
乳房の上部の厚みとボリューム 筋肉の下なので厚みがでる 厚みができない 厚みができない
乳房の動き 動きはあるが乳腺下よりでない 動きが3つの中で一番でる 動きがでる
筋肉の動き まれに大胸筋が連動して動くことがある ない ない
乳がん検診 インプラントを入れていると
申告する必要がある
インプラントを入れていると申告する必要がある インプラントを入れていると申告する必要がある


インプラントの素材の検討
   
  テクスチャード スムース
拘縮 数% 十数%〔高い〕
マッサージ 必要なし 毎日必要
柔らかさ スムースタイプより
少し硬く感じる場合がある
柔らかい


Q インプラントはどこの層にいれますか?

1)大胸筋下

 もともと乳房低形成で乳房が小さく、乳房の皮膚が薄い場合に選択されてきましたが、その他にも、さまざまなケースに応用され結果の出せる方法です。私のクリニックに来院される患者さんはこの方法の適応となる方が多いです。乳房上縁のスロープが作りやすいので乳房の上部のボリュームが欲しい場合の選択肢となります。

2) 筋膜下

 乳腺の萎縮が主体で乳房の皮膚が比較的厚く、皮膚に余裕のある場合に適応となります。大胸筋の筋膜と大胸筋の間にインプラントを挿入します。従来の乳腺下よりインプラントの固定が安定している方法です。

3) 乳腺下

 私はこの方法はほとんど行いません。皮膚が薄い場合は寝た状態になるとインプラントの輪郭が浮き出やすいことと、乳房上部のslopeが作成しにくいという問題点があります。みなさんの体はそれぞれ異なります。どこに入れるかは、プロの目でみて判断することですので、あまり宣伝やうわさにまどわされないほうが賢明と思います。よく説明を聞いて判断してください。


Q 切開線の入る場所はどこですか?

1) 乳房下縁切開(乳房の下の溝のところ)

 欧米人はこれを第一選択としています。わきに傷跡がつきませんので大胆なドレスやタンクトップ、水着を着ることができます。私もこの方法は様々な理由から合理的なアプローチと考えています。

  <参 考>

    PEPARS No.31 頁11-18 2009.7

    特集 乳房の美容外科 私の方法 以前と変わったこと、変わらないこと

    乳房増大術(豊胸手術):乳房下縁側方アプローチ  執筆 矢永博子

2) 腋窩切開 (わきの下)

 若い人で未婚の場合、胸に傷をつけたくない場合はこのアプローチを選択しています。

3) 乳腺縁切開

 乳輪の周りに傷がつくと日本人はとても目立つので、この方法は行わない方が懸命です。


Q たくさん出血するのでしょうか?

 予期せぬ想定外の出血や血腫というのは豊胸手術に限らず、あらゆる外科手術に共通の合併症ですが私は特殊な器具と内視鏡を用いて直視下に丁寧に剥離する手術を行っています。術中、術後の出血や血腫の発生の頻度がきわめてすくなく安全です。


Q その他に合併症はどのようなものがありますか?

1) 拘縮 インプラントの周囲組織が硬くなることです。手術中の愛護的操作をこころがけ、出血、血腫、感染をおこさないようにすること、また、ご本人自身の体質による因子もあります。

2) 感染 主に皮膚の常在細菌による感染症です。予防的抗生剤投与や日頃から術中清潔操作、洗浄等基本的対策をしっかりと行っています。当院では2001年の創業以来、この乳房増大術に関しての感染の発生はありません。


Q 麻酔が心配ですが

 豊胸は形成外科の美容外科の中でも痛みが伴う手術ですので、全身麻酔で行うのが安全です。当院では豊胸手術を全身麻酔の日帰り手術として行っておりますが、常勤の麻酔科専門医(矢永茄津医師)が術前評価、術中管理を行いますのでどうぞご安心ください。


Q手術のあとは何もしなくてよいのでしょうか?

 豊胸手術は術後の後療法も大切です。スムースタイプのインプラントは拘縮を予防するためマッサージを必ず毎日行います。テクスチャードタイプのインプラントはマッサージの必要は通常ありません。当院ではマッサージの指導、超音波治療なども行っています。傷あとのテーピングを最低3ヶ月は行いましょう。


Qインプラントはレントゲンにうつりますか?

 どんなインプラントもレントゲンにはうすくうつります。しかし、これは、専門の医師や技師にのみわかるもので、一般の方にはまず見分けがつきません。


2)脂肪注入による豊胸手術

 脂肪注入による豊胸手術は世界の主流ではありませんが、最近は脂肪注入の方法に工夫がされるようになり徐々に行われるようになりました。以前は、日本で他のいくつかの施設で大量脂肪注入による豊胸が多くおこなわれ、大量に脂肪を注入したために乳房に丸い大きいしこりを形成し、脂肪が硬く変性する症例がありました。

 こうした問題があり、脂肪注入は長らく汎用されませんでした。脂肪注入の一番の問題点は注入したすべての脂肪が100%生着しないことです。脂肪注入は脂肪を注射器などで腹部や大腿から吸引し、ばらばらになった脂肪を胸に注入移植します。ですから吸引した時点で血管も壊れています。

 本来、生体では脂肪の周りには血管あり、脂肪は血管から栄養を受けています。脂肪組織は血流がないと壊死になり、しこりや石灰沈着になります。また、できたしこりが乳癌との鑑別がしづらいという指摘をする乳腺外科の先生もいます。“自分の組織”“自分の脂肪”という言葉の魅力はありそうですが、痩せたヒトでは脂肪を採取しようにも限界があり採取できません。

 長期的な経過では合併症の頻度も高いというデータもあります。ですから、注入部と脂肪採取部の問題点,長期経過などを総合的に考えて、大きな胸を一回の手術で得たい場合はインプラントが第一選択になります。ただし、何らかの事情でどうしてもインプラントが使用できない場合や人工物でなく自家組織を希望される場合は、数回にわけて脂肪注入行うことは可能です。以上のさまざまなことを御理解していただけます方に行っています。


最近のトピックス

 最近は脂肪採取方が向上しています。脂肪採取時に脂肪と一緒に採取する血液成分や液性成分の中に生着率を上げる因子や幹細胞、脂肪前駆細胞が含まれるとの報告があり、それらを遠心操作で沈殿させて含めるようにしています。コンデスリッチらも同じような考え方で、様々採取方法に工夫がされています。

 当院では脂肪の生着を安定させる新しい方法として自家培養脂肪細胞+enrich脂肪移植を行っています。私は培養細胞を用いた治療を1985年から、約25年間途絶えることなく継続してきました。これまで表皮細胞、線維芽細胞、軟骨細胞の細胞を培養し、臨床応用してきました。それらの実績は国内海外の学会や論文ですでに認められ、数多くの臨床を積み重ねてきました。

 また、四半世紀以上にわたる細胞培養の経験を生かし、私は独自の脂肪培養法と移植方法を確立し、すでに臨床応用してきました。この方法をできるだけ多くの患者さんにお知らせしたいと思います。

 これまでの脂肪移植単独の問題点は移植後に脂肪が部分的に壊死し、生着率が不安定になることやそれに伴い脂肪が吸収されてvolumeが小さくなることでした。これらの問題が改善され、移植後の脂肪は柔らかく、様々な変形に対応できています。もうこれ以上治療はできないとあきらめないで、まず、なんでも相談してください。また他の病院で治療したあとでも、心配せずに相談してください。


<従来の脂肪注入と異なり必要となるもの>

 ① あらかじめ少量の脂肪を摂取し、培養を行いそして移植をするという手術手順のため2段階の 手術が必要となります。

 ② 脂肪細胞の培養期間が約6週間必要です。

 ③ 手術・麻酔・薬剤等の費用以外に培養脂肪細胞作成のための費用が必要になります。この治療は保険外自由診療です。


<思いがけない利点>

 2回目の移植時に作成するenrich 脂肪は本人の腹部や大腿から採取しますので(思いがけず)お腹周りが細くなったり、太ももがほそくなったりと喜ばれる方も多くいらっしゃいます。ただし、移植治療に必要な量を採取するのみですので、こちらに過度の期待をするのは本来の目的とはいえません。


<治療の手順>

 ① 脂肪の採取

   腹部もしくは大腿内側から局所麻酔下に約2mm程度の穴から少量の脂肪を採取します。

   培養開始

   移植を行う予定手術に合わせて培養を開始します
                 ⬇
   約2ヶ月の培養期間

 ② 2ヶ月後に培養脂肪細胞とenrich脂肪を組み合わせた移植手術

   腹部もしくは大腿より治療に必要と考えられる量の脂肪を採取します

   当院研究室で特殊処理を行い、enrich脂肪とします

   あらかじめ準備していたご本人の自家培養脂肪細胞とenrich脂肪を組み合わせて注入移植を行います

 ③ 日帰り全身麻酔でこの手術を行います。当院は麻酔専門医が常勤で待機しておりますのでどうぞおまかせ下さい。



2 .乳房がたれている、もともと大きく垂れている


 加齢による変化は乳房にもあらわれます。また、もともと大きくたれているかたもいらっしゃいます。若々しい乳房にもどりたい、乳房が大きすぎて肩や頚がこる、下着があわなくて困るという悩みもあると思います。

 そのような方には私のオリジナルの乳房縮小固定術をおすすめします。本来、乳房縮小固定術は決して簡単な手術ではありません。その他の乳房の手術に比べて高い技術と経験のいる手術です。自信を持ってこの手術を行い、結果を出すには相当な乳房の手術全般のキャリアが必要です。私におまかせください。


1) 乳房の大きさは大きくないけどたれている場合

 
乳房固定術(新しい方法:vertical mastopexy ):たるんだ皮膚のみ切除して、乳腺はそのまま、まとめて胸の上の方に固定します。固定は1カ所ではなく細かく糸で縫合します。乳輪のまわりと乳房下に目立たない傷あとができます。乳房の下の傷はしわに一致するのでほとんど目立ちません。また、従来の方法は横方向の傷も残りました。新しい技術であるvertical mastopexyは乳房下縁の横切開は行いませんので横方向の傷はつきません。

 シリコンインプラントによる豊胸:皮膚のたるみもあるが、乳腺がしぼんだ感じの方はシリコンインプラントを挿入することでたるみは目立たなくなり、volumeが得られます。傷あとは腋もしくは乳輪下縁にできますが、目立ちません。

 脂肪注入:軽度の下垂の場合は脂肪注入が非常に効果的です。欧米ではこの方法が最近トピックスになっています。上述の脂肪注入による乳房増大術のところ見て下さい。


2)乳房が大きくかつたれている場合

 
乳房縮小固定術(新しい方法:vertical reduction ):たるんだ皮膚と大きな乳房の皮下組織を切除し、脂肪吸引を合わせて行います。脂肪吸引は形を整えるために行います。下方にある乳頭乳輪は上方に移動します。固定は1カ所ではなく細かく糸で縫合します。乳輪のまわりと乳房下に目立たない傷あとができます。乳房の下の傷はしわに一致するのでほとんど目立ちません。また、従来の方法は横方向の傷も残りました。新しい技術であるvertical reductionは乳房下縁の横切開は行いませんので横方向の傷はつきません。


3).乳頭が大きい

 乳頭縮小術を行いますが、この手術は傷あとがほとんど目立たずに小さくできます。乳頭が大きいといってもひとによりさまざまです。長さが長い方、横幅の大きい方、乳頭の垂れている方、乳頭の割れている方もいます。私はそれぞれのタイプに応じたもっともよい方法を選択しています。私の手術は乳管をきずつけない方法を行いますので安心してください。女性にとって敏感な部分ですが、麻酔科専門医が管理しますので、安心して手術をうけられてください。


4).乳輪が大きい

 乳輪縮小は乳輪の形をととのえて小さくし、かつできるだけ傷をめだたなくする手術です。しかし西欧人と違い日本人は乳輪の周りの白い傷が目立つことがありますので、その点に注意しましょう。巨大で他人から見てびっくりするように大きくない限り、乳輪の縮小手術はお勧めできませんでした。しかし、最近、新しくレーザー治療が効果的であることがわかり、この方法は画期的です。これは手術ではありませんのでダウンタイムが短いのが利点です。翌日から入浴が可能です。色が薄くなる効果もあります。


5)乳頭がへこんでいる陥没乳頭←click)

乳頭がへこんでいる場合は陥没乳頭のコーナーをごらんください。以上の乳房乳頭乳輪の手術は1984年からの私の長いライフワークとして、形成外科、美容外科専門医として様々なオリジナルの工夫をこらし、完成度の高いものとなりました。また、麻酔科専門医の協力で、安全で安心できる手術を行っています。


- 陥没乳頭(保険適用) -


 陥没乳頭とはお母さんのお腹に入っている胎生期の乳頭の発育不全が原因です。ですから幼児期から陥没乳頭はあります。陥没乳頭で悩んでいらっしゃる方も多いと思います。たくさんのご相談がよせられます。比較的多い質問に対してお答えします。


Q. 陥没乳頭手術は健康保険の適用ですか

A. 陥没乳頭は形態的な問題だけでなく、乳輪下膿瘍という感染症をおこしやすく、また陥没の程度によっては授乳という大切な機能に支障をきたすこともありうる“疾患”と考えますので、当院では保険適用として治療を行っています。しかし、授乳年齢にかぎり保険適応ですので、授乳年齢でない方は適応になりません。特殊な場合は別として授乳年齢40代半ばまでと考えられますので、それ以降の年齢の方は保険適応にはなりません。


Q. 陥没乳頭の手術をうけるときの費用(健康保険本人負担分)はどの程度ですか?

A. 診察のみ行った場合、初診料の本人負担分は810円です。診察後、手術を前提として術前検査を行った場合は本人負担の合計は2960円です。手術当日の健康保険の本人負担分は両側で手術料そのものの本人負担分は約45000円、麻酔料、薬剤や点滴などの本人負担分が約24000円程度、合計約69000円程度です。陥没乳頭の重症度によっては特別な手術を同時に併用して行う場合もありますのでその場合約8万6千円前後です。(これも保険適用です。)


Q. 手術には入院が必要ですか?

A. 全例、日帰り手術、外来治療で可能です。


Q. 手術を希望する場合の治療の流れを教えて下さい。初診時にすぐ手術をしていただけるのでしょうか?

A. 原則的に初診時に即手術は行っておりません。まず診察をして手術の適応かどうかを判断します。手術の適応にあり、患者さんご自身も手術を希望される場合はまず術前検査を行い、手術日を決定します。以後の来院日は手術当日、手術翌日、術後1週間、術後2週間、術後1ヶ月、術後3ヶ月・・・術後6ヶ月となり、6ヶ月間のfollow up を行います。術後6ヶ月で再陥没がなければOKです。この時点でいったん治療のゴールとします。


Q. 敏感な場所なので手術の時の痛みが心配です

A. 静脈麻酔と局所麻酔を組み合わせて手術は眠っている間に終わります。ただしこの場合車を運転しての帰宅は禁止です。


Q. 手術にともなう合併症・危険性は?

A. まず形成外科の教科書にも書いてあることですが、幼少時からある陥没ですので年期が入っています。ですから、再陥没の可能性は完全に否定できません。ただ、当院オリジナルの手術法は再陥没が少ないのが特色です。メスを加えるからにはどんな手術も感染の危険性があります。開院以来当院で行った陥没乳頭手術は1例も術後感染症例はありません。解剖学的構造上乳管の周囲を操作しますが、教科書的な乳管損傷の発生例はありません。