- 乳房再建のQ&A -
Q1:乳房の再建はどんな方法がありますか?


乳房再建の方法は大きく分けて、自家組織による再建と組織拡張器を用いた人工乳房による再建があります。

1) 自家組織による乳房再建とは?

患者さん自身の体の一部の組織を胸に移植する方法です。

 @お腹の皮膚、脂肪、筋肉をあわせたもの(腹直筋皮弁法)を胸に移植して乳房をつくる

 Aせなかの皮膚、脂肪、筋肉をあわせたもの(広背筋皮弁法)を胸に移植して乳房をつくる

2つの方法があります。

なぜ乳房をつくるのに筋肉と血管が必要かといいますと乳房をつくるのに必要な大きさの皮膚と脂肪組織は筋肉

から入る血管がないと生きないからです。従って、単なる脂肪移植では乳房は再建できません。

この手術法の利点は自分の組織で再建されるため、異物感がないことです。しかし、胸に他の部の組織が移植

されるため、胸と他の部位に大きな傷あとが残ります。また、胸に他の部の皮膚が移植されるため、その部の知覚

が鈍くなります。 以上の自家組織を用いた乳房再建方法は胸と体の他の部位の2つの手術をするので、手術

時間も長く、患者さんの体の負担も大きくなります。そのため入院期間は平均3〜4週間くらいかかります。

長期的経過では筋肉の萎縮により再建した乳房が若干小さくなる傾向があります。

−腹直筋皮弁法による乳房再建の適応となるのは−

  1) 胸の筋肉(大胸筋)がなくて広い範囲に組織欠損がある場合
    
     (昔の手術を受けられた方)

  2) 下腹部の脂肪が多く切除を希望される場合

  3) 人工物を使いたくない方

  4) 健側の乳房が大きい方

適応とならないのは将来妊娠出産の予定のある場合や腹部に手術の傷あとがある場合などです。

−広背筋皮弁法による乳房再建の適応は−

   1) 若い人で将来妊娠出産の予定のある場合

   2) 比較的小さな乳房をつくる場合

   3) 人工物を使いたくない方

   4) 腹部に手術の傷あとがあるため腹直筋皮弁が使用できない場合

適応とならないのは腋窩のリンパ節廓清時に広背筋皮弁に栄養を供給している血管がなくなった場合や大きな

乳房を再建する場合です。広背筋皮弁法は腹直筋皮弁法にくらべて組織の量が少ないので大きな乳房が再建

できません。


2)組織拡張器をもちいた人工乳房による再建とは?

 −現在はこの方法が多く行われています−

 組織拡張器という人工の装置を胸の筋肉の下に留置し、徐々に皮膚皮下組織を乳房の形に膨らませて人工

乳房に入れ替えるという再建方法です。ちょうど女性が妊娠したときに徐々にお腹が膨らんでいくのと似ています。

組織拡張器をいれた後、2〜3週間に1回の割合で4〜6ヶ月くらいの期間に外来で生理食塩水を少しずつ組織

拡張器に注入していきます。この手術は胸の手術のみで他の部位に傷がつきません。手術部位が胸だけです

ので手術時間が短く、入院期間は約4〜5日くらいです。胸の皮膚を拡張するので皮膚の色合い、知覚も温存

されるなどの優れた利点があります。また、もし乳がんが胸に再発(局所再発という)した場合は皮膚の直下で

大胸筋の上に再発します。ですから大胸筋の下に組織拡張器も人工乳房もいれるので、これらが入っている

ことで局所再発が発見しにくくなることはありません。このため、乳房切除時と同時におこなう一期再建でもよく

用いられます。人工乳房は生理食塩水バッグとコヒーシブタイプの新しいタイプのインプラント)が用いられて

います。人工乳房はその耐久性・安全性が永久に確保されているわけではありません。その時代に最も安全と

考えられるタイプのものに入れ替えることが望ましいと私たちは考えています。


−組織拡張器による乳房再建の適応は−

   1) 整容的な配慮を第一優先とする場合

       (乳房の形に膨らませることができるので形がきれい)

   2) 胸の手術のみで体の他の部位に手術の傷あとをつけたくない場合

適応とならないのは、胸の筋肉(大胸筋)がない場合です。なぜなら、組織拡張器は胸の筋肉の下に挿入する

ことで安全に膨らますことができるのであって、皮膚直下に挿入した場合、露出する恐れがあるからです。

この方法の欠点としては、人工物なので破損の可能性があることと、10年〜15年くらい経つと入れ換えが

必要ということ、多少違和感がある方がおられることです。 しかし最近の人工乳房は優れているので違和感を

訴えない方がほとんどです。(バッグの抜去のみや入れ換えは小さな切開により行えますので日帰り手術で

可能です。)もっと詳しく知りたい方は「乳房再建を知っていただくために」のコーナーをご覧下さい


Q2:乳がんの手術のあと再建はいつごろからできますか?

 乳がん手術のときに再建する方法を一期再建といいます。患者さんの希望で施設により一期再建を行っている

ところもあるので乳腺外科医に相談されてください。一期再建は通常乳房切除と同時に組織拡張器をいれる

ことが多いです。これは組織拡張器が筋肉の下に挿入されるので局所再発の発見がしやすいからです。

自家組織による再建(おなかやせなかの筋皮弁)は乳癌のタイプ(非浸潤癌の場合など)で局所再発の心配が

少ない方が選択されるのがよいと思います。自家組織による再建は局所再発が比較的見つけにくいためです。

乳がん手術が終わられて再建を希望する場合は6ヶ月後からいつでも再建できます。ただし、抗がん療法を

行っている方は白血球の値が正常になり体力が快復するまで待たれた方がいいです。この点も乳腺外科医に

相談されるといいです。


Q3:健側と同じ乳房が再建できますか? 

 神様ではありませんので健側と全く同じ乳房は再建できません。これは乳がん切除のためにご自分の乳腺と

いう組織量が不足していることと、人工乳房はオーダーメイドではないので再建された乳房にはある程度の

左右差が生じます。自家組織もご自分の体の乳腺とちがう組織が移植されるので、再建された乳房にはある

程度の左右差が生じます。これが現時点での治療の限界です。もちろん出来るだけ左右のバランスが合う

ように手術を行います。なるべく違和感のないよう再建するよう努力するのが私達再建外科医のつとめです。

また、人によって皮膚の伸び方、傷の治り方は様々なので、個人差もあります。 しかし、水着や薄い服を着て

いたら手術をされたことは分からないでしょうし、温泉に行けるようになったと喜ばれる患者さんが多くいらっ

しゃいます。 ご本人の希望により、左右の対称性を出すために、健側の乳房下垂がある方は乳房挙上

(乳房縮小固定術)を、乳房が小さい場合は豊胸術を行うこともあります。


Q4:きずあとは残りますか?

 乳がんの手術の傷あとは消えることはありませんが、乳房再建のときにできるだけ目立たない傷あとに変える

ことはできます。組織拡張器を用いた人工乳房よる再建では胸のみに目立たない傷あとが残ります。腹直筋

皮弁による乳房再建では胸と下腹部つまり下着に隠れる部分に大きな傷あとが残ります。広背筋による乳房

再建では胸と背中に大きな傷あとが残ります。(背中は横の傷あとはブラジャーで隠れます。また縦の傷あとは

背中の外側に位置するので背中の開いた服や水着を着ても目立ちません。)


Q5:乳頭乳輪の再建はできますか?それはどのくらいの時期に手術するのですか?

 乳頭乳輪の再建はできます。乳房を再建したのち、通常、約6ヶ月経過してから乳頭乳輪の再建を行います。

乳頭は

  1) 健康側の乳頭の半分を使う方法

  2) 再建した方の皮膚を持ち上げて新しく乳頭をつくる方法

乳輪は

  1) 足の付け根のやや色が黒い部分の皮膚を用いる方法

  2) タトゥー(刺青)を用いて色をつける方法等があります。

等があります。 乳頭乳輪の手術は外来での日帰り手術で可能です。

遠方の方は1泊ホテルにとまられるとか2〜3日入院される方もおられます。

乳頭乳輪に関しては別にコーナーがあるので詳しく知りたい方はそちらをご覧下さい。


Q6:乳頭乳輪の位置がちがう場合になおせますか?

 乳頭乳輪が温存させた場合に左右の位置が異なることがあります。乳房全摘で乳頭乳輪が温存されている

場合は乳腺がなくなるため、皮膚が縮んでしまい健側より上の方に乳頭乳輪の位置がずれます。

また、乳房温存では乳腺を切除する方向へ乳頭乳輪がずれます。

再建法としては

  1) 皮下茎皮弁法で乳頭乳輪をつけたまま健側と対称てきな位置に移動する

  2) ずれた乳頭乳輪を取って、新しい位置に移植する

  3) 乳頭乳輪を全く新しく再建する

      (かなり大きなずれがある場合や1)と2)で修正できない場合)

以上の3つの方法があります。通常1)の方法で位置は移動できます。個々の胸の状態に応じて位置のずれを

なおします。 ただこの乳頭乳輪移動術は難しい手術です。乳房の真上にもうひとつ大きな傷あとができること

にもなります。


Q7:乳房温存した場合も再建できますか?

 乳房温存は健側と同じ乳房が温存されるわけではありません。乳がんの部位を切除(部分切除)するので

大なり小なり変形が残ります。円錐切除など小さい範囲の場合は変形がほとんど残らないこともあります。

4分の1切除や半分切除の場合は変形が残ります。変形した乳房も再建はできます。部分再建の方法としては

小範囲の場合は脂肪移植、真皮脂肪移植があります。これはお腹の部分の脂肪と皮膚の一部を胸に移植

する方法です。おなかに傷あとが残ります。取る量により傷あとの大きさが決まります。広範囲の場合は

外側の脂肪弁(脇の近くの脂肪を移動する)、腹部の脂肪弁(乳房の下縁近く)、広背筋皮弁など自家組織に

よる再建を行います。お腹やせなかに傷あとが残ります。取る量により傷あとの大きさが決まります。

人工乳房は部分切除の変形に応じた形がないので適応になりません。


Q8:脂肪注入で乳房再建はできますか?

 脂肪注入はおなかや大腿部から脂肪を吸引して脂肪のみを注入するという方法ですが、再建に必要な

ボリュームと支持性、形状の維持が得られないため、手術結果が安定していないことと、注入した脂肪が

しこりになったり、壊死することがあるため脂肪注入のみによる乳房再建は当院では行っていません。

また、石灰化を生じるので乳がんの再発との区別が難しい場合があります。


Q9:乳がんの再発が見つけにくくなることはありませんか?

 組織拡張器や人工乳房は大胸筋という筋肉の下に入ります。局所再発は筋肉の上に発生します。

ですから人工乳房の存在により局所再発の発見の妨げになることはありません。またインプラント法は

胸筋の下にシリコンインプラントを入れるので、外科の先生の診察や画像検査の妨げになることはなく、

乳癌の発見が遅れることはまずありません。自家組織(筋皮弁)で再建された場合は胸をご自分の筋肉

脂肪でおおうので局所再発が見つけにくい場合があります。このため定期的な画像検査が必要です。


Q10:放射線治療した場合も再建できますか?

 再建できます。ただし、人工乳房を用いる再建では、治療後1年はおいて皮膚の状態をみながら再建の

時期を決めます。また、組織拡張器もゆっくり膨らませて行きます。放射線を照射しているので胸の皮膚が

のびない方は自家組織で再建できます。また、自家組織+人工乳房での再建を行うこともできます。